いい ちいさな ものづくり

“着流し”を好んだ日本人の感覚を源流に。SOWBOWの粋な「COMFORTABLE CLOTHING」

ー作り手

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現代の私たちが「和の装いとは」と問われて思い浮かぶのは、どんなものでしょうか。成人式や結婚式、夏祭りの浴衣、もしくは茶道などのお稽古ごとなど、特別な時に着飾るための煌びやかな着物。まずはそんなイメージが浮かびやすいかと思います。

しかしそういったハレの日の着物ではなく、日常着としての和の装いを提案するのがSOWBOW(ソウボウ)さんです。SOWBOWさんは主に九州の地場産業や伝統工芸などを取り入れ、日本の文化、環境、歴史に適したアイテムを生み出しています。

コンセプトである「COMFORTABLE CLOTHING」は、単に着心地の良い日常着を意味するのではありません。

それは日本人の持ちあわせる【着流し】の感覚であり、 着ている人と服の間で生まれる空気感、 雰囲気を大切にすることを念頭に置いてプロダクトを製作しています。

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”着流す”という言葉は、元は羽織や袴 をつけずに和服を着るということ、または着物を無造作に着ることを言います。きっちりと着込んだ時よりも、寛いでいたり、垢抜けた印象を与えるその姿は、格式よりも“粋”や“通”を好んだ江戸の町人の好みにマッチしていきました。

3枚目

さて、「SOWBOW」のアイテムに戻ってみましょう。ブランドを代表するワンピースカラーシャツは、ただ一見するだけではむしろ洋装のベーシックに思えます。"日本的感覚"や"伝統"がどこにあるのかと、疑問に感じるかもしれません。少しずつその秘密を紐解いていきましょう。

4枚目ワンピースカラー襟元_

生地はシルク混のコットン。インディゴ染色は宮崎県都城市の染め工房で約2ヶ月かけて染められたものです。色落ちや日焼けが少なく、”青みが冴える”表情の変化をゆっくり楽しむことができるそう。染めの施されていないホワイトの生地は洗い上げにこだわり、しっとりとした質感が肌に馴染みます。

ボタンには、有田焼の工房で製作したオリジナル陶器ボタンを使用。職人によって、ひとつひとつ作り上げられる陶器ならではの個性や素材感にも注目です。

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お次は福岡県南部の筑後地方で発展してきた、久留米絣を用いたシャツ。戦後に洋装化が進むまでは、普段着の和服を作るために使われてきた生地で、伊予絣、備後絣とともに日本三大絣の一つ。久留米絣の生地は着るごとにに柔らかな風合いに変化していくそうですよ。

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一方で、一目で"和"とわかる、半纏も。古くから日本を代表するワンマイルウエアとして人々に親しまれてきた半纏は、ビッグサイズで着用時の丸みを帯びたシルエットが特徴です。

お猪口A_F20_
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シャツに使用しているボタンを製造している有田焼の工場では、オリジナルのお猪口も製作されています。

織物、焼き物をはじめ、日本を代表するさまざまな伝統工芸の産地がある九州。その工芸技術を余す事なく活用してあるにも関わらず、そのことをあからさまにはしないところからが、既に「SOWBOW」の世界観の始まり。"着流し"とは価値のあるものを自然と自分に取り込めている状態なのかもしれません。

ーものがたり

「SOWBOW」は、九州を拠点に生産管理、卸販売を行う代表である吉村さん、そして、東京を拠点にディレクション、デザインを行う藤田さんの2名体制のブランドです。

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お二人がアパレルメーカーに勤めていた時、九州地方で培われてきた生地・染め・縫製の実用性に触れ、その技術を用いたものづくりを通じて、その素晴らしさを発進したいという思いから2016年に「SOWBOW」を立ち上げました。

多くの方々に手にとって身につけていただけるような、また、素材や伝統技術の良さが伝わるようなシンプルでミニマルなデザインにこだわっています。

縫製は佐賀のドレス工場で行い、染めは宮崎。シャツに使用するボタンは、経済産業大臣指定伝統工芸品に指定されている有田焼。半纏は、福岡県筑後市に1913年創業した半纏屋、宮田織物で製作。本当にさまざまな技術を九州で担っているのがわかります。

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中でも重要無形文化財である久留米絣は、あえて久留米絣っぽくない生地を使用し、いわゆる「和っぽさ」や、「絣で作る洋服はこういうものだ」という固定観念を覆したかったのだとか。現代の日常着としてのチャレンジが伺えます。

ー想い

ブランド名 SOWBOW<蒼氓>には人民や民といった意味があります。
SOWBOW の制作する服が、 「特別な誰かの為のものではなく、 人々の日常に寄り添うものであってほしい」そんな想いから名付けました。

SOWBOWさんが取り入れるのは、かつて日常的に使われていた日本の素材やデザイン。それは必ずしも「着物」ではありませんが、その源流には日本人が伝統的に持っている感覚が確実性を持って流れています。「伝統だから」「守らなければいけないから」着るのではなく、シンプルに「心地良いから着たくなる」ものを作っていらっしゃいます。

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手に取り身につけるという自然な形で、服と使い手との周りに生まれる、風通しの良い空気感。アイテムを通し、暮らしとその人自身にいま一度馴染んでいく日本の文化や歴史。

“粋である” とはどういうことか。それをこの心地よい流れの作り方自体からも教えてもらったように感じます。

ー作り手情報

2021年2月10日


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