いい ちいさな ものづくり

140年の歴史を持つ武州正藍染。ともに丁寧に年を重ねたくなる、うしじま縫製の美しい藍染雑貨たち

—作り手

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福岡県八女市にアトリエを持つうしじま縫製さん。武州正藍染(ぶしゅうしょうあいぞめ)と呼ばれる、武州地域(現在の埼玉県)で江戸中期より続く伝統ある藍染生地をつかった作品を制作されています。特徴は、藍の葉から“自然発酵”で抽出した染料で染めていること。手染めによる微妙な風合いも魅力的です。

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武州正藍染と言えば、主にハンカチ、のれん、テーブルクロス、ジャケット、ワイシャツ類などに使われています。しかし、うしじま縫製さんでは、バッグ、コースター、小物入れに加え、今の時代にぴったりなマスクやマスクケース、エコバッグ付きミニ財布も製作。

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また、藍染を気軽に手にとれるヘアゴムやバッジ、生活感を隠してくれるカバー類(植木鉢・ティシュ・ガス缶)も制作しています。

日常に溶け込み、遊び心も感じる作品の数々を見ていると、少し敷居の高かった藍染がぐんと身近に感じられます。

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—ものがたり

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うしじま縫製というブランド名の由来はお母様の会社からだそうです。彼女が30代前半の時、福岡県八女市の実家のとなりに牛島縫製という名の工房を立ち上げました。以来40年以上学生服やオフィスユニフォームの生産を行っていたそうです。

小さい頃から、そんな母の姿を見ていたこともあり、洋服というものに自然と興味を持つようになりました。

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息子の牛島さんは、高校卒業まで八女で過ごし、大学卒業後は、福岡のセレクトショップに勤務。
その後は、通販会社に転職し、メンズファッションのバイヤー職を経験しました。現在は、個人で活動されています。

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ブランドを立ち上げたきっかけは、武州正藍染との出会いから。武州正藍染のことを知ったのは、前職の頃でした。

4、5年前に出張で埼玉県の取引先に伺った際に、
武州正藍染の生地を生産している企業を紹介していただきました。
そこで、色落ち加工を施した剣道着の生地を見せていただき、優しくも深みのある色合い、風合いに魅せられて「いつかこの生地を使って、母と何か作ってみたい」と思うようになりました。

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製品に使用しているのは、武州で140余年以上の歴史のある藍染工場が生産している藍染織物です。3ヶ月を費やすその生産工程には、至る所に無数のこだわりが込められています。

そのこだわりの一つは「綛染め(かせぞめ)」と呼ばれる糸の染色方法です。

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武州正藍染には、糸の段階で染める「糸染め」と、布にしてから染める「型染め」の二つの技法があります。「綛染め」は糸染めの種類の一つであり、糸の束を染料に浸し、絞って乾かす作業を何度も繰り返します。手作業で染めると、機械染めよりもしっかりと糸の芯まで色が入り、色落ちしにくくなります。さらに、糸の状態で染めたあとに織り上げることで、自然な“青縞”が生まれます。布にしてから染める型染めでは味わえない風合いです。

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また、二重刺子と呼ばれる技法を用いた生地は、特に厚手で丈夫。刺子とは、布地を補強するために刺し縫いにした衣服のこと。その丈夫さから、江戸時代以降は火事装束や、現代でも剣道など武道の稽古着にも使われています。

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日本伝統の藍染は、和のものですが、洋のインテリアとの相性も良く、また、藍染独特の経年変化は、使うごとに深みが増し、どこか愛嬌もあるような魅力的な生地です。
その魅力がより伝わるようなものづくりをしていけたらと思います。

うしじま縫製さんでは、40年以上学生服やオフィスユニフォームの縫製業に従事していた縫子(ぬいこ)さんと共に、商品企画をしています。牛島さんの感性と、縫子さんの長年の経験が合わさって、新しくも懐かしい藍染の作品の数々が生まれているのでしょう。


—想い

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「大切な着物は藍の風呂敷に包む」。このことわざの通り、藍には防臭・抗菌・防虫の作用があります。そのほか、アトピー性皮膚炎やあせも、乾燥肌など、皮膚病にも効果があるそう。丈夫な上に、安心して長く使うことができます。

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歴史とこだわりが詰まった武州正藍染の生地を、経験豊富な縫子さんが丁寧に縫製をする。その二つが組み合わさり、うしじま縫製さんの作品が出来上がっているのです。

丁寧な縫製もさることながら、やはり一番は、武州正藍染の生地の力です。
何を製作するにしても、それなりにサマになります。しかし、より、その魅力が出るアイテムをこれからも企画していきたいです。

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使う年月で風合いが変わる藍染。人が歳を重ねるように経年変化していく藍の表情は、温かみのある特別な魅力を持っています。

何百年も前から日本人に愛され、明治時代には海外から“ジャパン・ブルー”と呼ばれることもありました。それはまさに私たち日本人のソウルカラーと言えるかもしれません。色や染料という枠を超え、日本の歴史や日本人の心を静かに伝え続けているのかもしれませんね。

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生活の道具を超えて私たちに寄り添う、うしじま縫製さんの武州正藍染。皆さんの暮らしの中にもおひとついかがですか。


—作り手情報

2021年10月21日


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