いい ちいさな ものづくり
世代を超えて愛されるぬくもりをかたちに。国産無垢材から誠実につくられる、UMEBACHI FURNITUREの家具
ー作り手
埼玉県川越市。風情あふれる古い街並みが美しいこの地でUMEBACHI FUNITUREさんは工房を構え、無垢材を使った家具を制作しています。木材については、主に国産の広葉樹(クリ、クルミ、サクラ、タモ、ナシなど)を使用。防腐剤や防虫剤は一切使わず天然乾燥と人工乾燥を併用した木材にこだわっています。
国産の広葉樹は残念ながら流通の問題などから、あまり利用されていない。持続可能な木材利用として、国産広葉樹を積極的に利用することに取り組んでいる。国産の広葉樹の魅力をたくさんの人に伝えたいと思っている。
日本の山間部では古くから国産広葉樹を生活に役立ててきました。しかし、外国産広葉樹に比べて均質なものを大量に用意することが難しく、現在の大量生産の仕組みの中では多くがパルプ原料になっているそうです。少量生産のUMEBACHI FURNITUREだからこそ、国産広葉樹の使用が可能なのです。一点一点ていねいな手しごとで仕上げられています。
クリ材のフレームに籐(ラタン)の座面を張ったスツールは、しなやかで長時間座ってもおしりが痛くなりません。どの面を見ても美しく、繊細な手しごとが施されていることがよくわかります。重さは約1.8kgと軽く、扱いやすいのも嬉しいです。
ヤマザクラの木で作ったティッシュケースは、はじめは淡い黄褐色ですが使い込むと色が濃くなり、味わいを増していきます。よく見ると黄緑色やピンク色が入り混じり、ヤマザクラならではの豊かな表情を見せてくれます。材質は緻密で硬く欠けにくく、肌触りが良いのが特徴です。
国産のタモの木で作ったコーヒーメジャーは、ひとかたまりの材木から一つ一つ丁寧に小刀で削り出しているため取手まで木目がつながっています。1杯で約10gの豆をすくうことができ、キャニスターにそのまま入れておくと、だんだんとコーヒー色に染まっていきます。耐久性を高めるために、食品衛生法に適合した塗料で下地処理を施し、植物性オイルで仕上げられています。
ーものがたり
高校生のころに木工にはまった。一つとして同じ物がない木目、部位による木材のくせなど、素材としての木の多様性に魅力を感じるようになった。それから、仕事としてずっと関わっていきたいと思うようになった。
高校の芸術選択科目で木工を選び、ものづくりの楽しさに出会ったことが、制作活動の原点だったそうです。2013年に埼玉県立川越高等技術専門校木工工芸科修了、その後は無垢材を使用した特注家具の工房に勤務し、2018年には春日部桐箪笥技術後継者育成講座を受講。2019年4月にご自身のブランド・工房、UMEBACHI FURNITUREを開業しました。
ブランドのコンセプトは「無垢の木でつくる家具 職人が木の家具と共にある暮らしを支える」。普段家具を購入するとなるとまず思い浮かべるのは量販店か、オーダーメイドの大きくは2択ではないでしょうか。UMEBACHI FURNITUREさんが目指しているのはその中間。安価な家具は飽きたらすぐに捨てる、一方でオーダーメイドは高価で手が出せない、こうした家具を取り巻く現状に『木の良さを知ってほしい』『長く使って欲しい』という想いのもと職人の手づくりとしてはお手頃な価格で家具を販売されています。
職人が家具をつくり届けることは、使い手の暮らしにも寄り添うということ。売って終わり、ではなく生活や用途の変化に合わせて例えば椅子の座面を張り直したり、テーブルの脚を調節したり。こうして「家具と共にある暮らしを支える」ことができるのは職人ならではです。
どの家具も素朴でぬくもりがあるデザインに仕上げられているのは、多様な暮らしと変化していくライフスタイルにも馴染むようにと心遣いがあるからではないでしょうか。何より原点となった高校時代に感じた木目の美しさ、木の多様な魅力をシンプルに堪能することができます。どんな切り出し方で木目を見せるか、どのワックスで磨き上げるか…すべては木の美しさと家具となった時のあたたかな使い心地を感じて欲しいという願いのもと制作されているのです。
ー想い
蚤の市などで見かける、古家具はなんとも味わい深く、魅力的。それは、人が長く使いたいと思えるデザインであるから今まで捨てられずに残ったのかもしれない。また、人が大切に使ってきた歴史が刻まれているからかもしれない。そんな風に次の世代へ引き継いでいってもらえる家具作りをしたいと思っている。
UMEBACHI FURNITUREさんが目指すのは『次の世代へ引き継いでもらえる家具』。桐の箪笥を100年受け継ぐことが当たり前だったように、日本人は昔から木と共にこの風土を工夫して暮らしてきました。
そんな木や木工製品が身近な日本ならではの知恵が、制作にも活用されています。
作り方も、ホゾと呼ばれる日本の伝統的な木組みの技を用いている。ホゾは完成すれば見えなくなってしまうが、見えないところに気を遣うことで長く使える物となる。
『ホゾ』は釘を使わずに、木の凹凸だけで別々の木材をつなぎ合わせる昔ながらの手法です。仕上がりの綺麗さに加えて、釘のサビによる腐食は発生せず木材同士の接着面が増えることから強度も増します。木目や木の組み合わせの美しさと丈夫さが実現するのは、まさに職人の技です。
森の中で何十年という年月をかけて育った木は、家具に形を変えてもなお表情を変え続けます。木それぞれの個性と、暮らしの中で共に過ごすことで生まれる経年の深みをUMEBAYACHI FURNITUREさんの家具で味わってみてはいかがでしょうか。
ー作り手情報
2021年11月25日