ポーチ　地上に煌めく星々ーたんぽぽのような人　Kちゃんのこと

　ダイヤドミナというモヘアの入った段染め糸のブルーパープル系で、ポーチを編んでみた。夜のイメージで。編み込むのはたんぽぽと決めていた。図案をプロジェクトペーパーに起こして色糸を選んで、編んで仕上げてみた時に浮かんだのは、宇宙の煌めく星々。たんぽぽが星々のように見えた。夜のたんぽぽは見たことがないけど、宇宙の星々を反映した地上に煌めく星々のようだなぁと思った。そして、宇宙の星々になったすでに天に召された友人たちの姿が浮かんできた。その中の一人、Kちゃんの話をします。　

　Kちゃんと知り合ったのは、Kちゃんが20代前半で、私が30代前半の頃。Kちゃんは、とてもチャーミングで、ユーモアのある人です。Kちゃんのお父さんは、全盲で、お母さんは、ほぼ全盲に近い弱視。そして、Kちゃんの弟は、重度の自閉症です。子どもの頃から、Kちゃんに乗っかっている責任は重かった。今で言うヤングケアラーです。付かず離れずの付き合いをしている間も、Kちゃんにはいろんな試練があったけど、ものともしないで乗り越えていた。Kちゃんは、最終的にケアマネージャーの仕事についたのだけど、それからも、お父さんが、二度脳梗塞に倒れ、右半身が不自由になった（ということは、点字を読めなくなったのです）。その後、お母さんの突然死。お父さんは、認知症にもなり、すべてのことが、Kちゃんの肩にかかったのです。お父さんを入所型の施設に入れて、弟も、入所型の施設に入れて、様々な手続きを全部Kちゃんがして、プライベートな時間が取れず、貧血がひどくなり、病院で診てもらったら、白血病と診断されて、余命宣告を受けた。それから、お父さんと弟のために様々な手続きを一人でして、一区切りついた時、さほど苦しまずに亡くなった。享年43歳。見事な人生だったと思う。私はKちゃんから、一度も「私は苦労ばかりしている」という言葉を聞いたことがない。逆に「私の人生、悲惨に見えるかもしれないけど、そこそこ面白い人生なんだよ」と言っていたのを聞いたことがある。
　 Kちゃんのことを今でも時々思い出す。その時の彼女はいつも笑顔なのです。まるでたんぽぽみたいに。そして私に、「なんとかなるよ！頑張って！」と、天国からエールをくれる。そんな一所懸命生きたKちゃん。地上に煌めく星々・たんぽぽのよう。Kちゃんの声が聞こえる。「私は自分の人生を生き抜いたよ！私、頑張ったよ！人からどう思われようと、幸せだったよ！」と。「みんなも頑張ってね！なんとかなるから！」と。そんな力強いKちゃんのエールを感じていただけたら嬉しいと思い製作したポーチです。
　あぁ、また前振りが長くなった。申し訳ない。
　ベースは、ダイヤドミナという、モヘアの入った段染めの糸。編み込み部分には、スペクトルモデム 、シェットランド、ザンビアプリント （廃番）、ソフトドネガル（廃盤色）を使用。裏地はお手頃価格の国産の布ですが、お気に入りの生地です。ポーチは大きめです。丈が長めです。お裁縫が苦手な私の腕と、高い材料費を考慮した、価格設定です。ポーチ本体と裏地は、手縫いで縫い合わせています。万が一、解けてしまった場合、お客様の方で縫い合わせ可能だと思いますが、送料はいただきますが、当方での縫い合わせは無料です。また、メンテナンスには可能な限り対応いたしますので、何かございましたら遠慮なくご連絡ください。ただし、故意によるものには対応できません。ご容赦ください。もらってくださる方がいなかったら自分で使おうと思い作った究極の自分仕様のポーチです。お気に入りの作品に仕上がりました。ちょっとそこまでにも。

《使用糸》 ダイヤドミナ　ウール50％　モヘア（キッドモヘア）21％　ナイロン29％
　　　　　スペクトルモデム ウール100％
　　　　　ソフトドネガル（廃盤色）　ウール100％　イギリス製
　　　　　シェットランド（英国羊毛100％使用）ウール100％
　　　　　ザンビアプリント（廃番） オーガニックコットン100％
《裏地》 国産　コットン100％
《ファスナー》YKK 国産