ポーチ　いちめんのなのはな（山村暮鳥　風景　純銀もざいく　からのインスピレーション）

　確か、中学生の頃だったと思うのだけど、国語の授業で、「いちめんのなのはな　いちめんのなのはな・・」の詩を習いました。ここで山村暮鳥の詩を全部書くと長くなるので、省略しますが、この、ひらがなだけで書かれたーいちめんのなのはな　いちめんのなのはな ・・ーを読んだ時、目の前に本当にたくさんの菜の花が浮かんで、黄色一色の中に光が射し込んで、菜の花たちが春霞の中で光り輝いて、とても綺麗な風景が心に浮かんで、感動したのを覚えています。きっと、山村暮鳥もおんなじ風景を見たのだろうと。そして、ただただ、その感動を伝えたくてこの詩を書いたのだろうと思ったのです。静寂の中に、むぎぶえや、ひばりのおしゃべりが聞こえたんだろうと。「私もおんなじ風景を見たよ」と、山村暮鳥さんに伝えたくて、このポーチを作りました（バッグの試し編みですが）。菜の花は春霞の中で咲いているようで、その春霞を表現するのに、ベースの糸は、野呂英作の「はなあかり」の5番がよいと。早速デザイン開始です。
　その昔、私は、絵本作家さん（絵を描くのもお話を作るのも好きだった）になることを夢見ていて、美大受験のために絵を習っていたのですが、絵の先生は、「黄色は一番色相が狭いから、あえて、その色相の狭い中で、自然の風景を描くのだ」とおっしゃっていたなぁ。もう随分前に亡くなられたけど、我が家にも、先生の絵が飾られています。黄色系の絵の具を使って描かれた先生の絵のタイトルは、「野」。きっと先生にも山村暮鳥の見た風景が見えたのだろうなぁ。
　結局、私は、美大受験に失敗し、大学では臨床心理学を専攻したけど、最終的には編み物と刺しゅうの世界で色遊びをしているなぁ。絵の先生がおっしゃっていた。「絵の道が本当にあなたの進む世界なら、いつか必ず戻ってくることができるよ。たくさんのお土産を持って」と、「美大に落ちた」と先生に報告したら、先生に言われたけど、本当にそうなったなぁ。私は、今、編み物や刺しゅうで稚拙だけど絵を描きお話を作っている。しかも、大学で学んだ心理学も少しは役に立っている。先生のおっしゃったことは本当だった。良かった、たくさん寄り道をして。結果、編み込み好きのただのおばさんになったけど。でも、それが一番自分にあっている。
　話がずれてきました。菜の花畑を表現するのに、ベースを「はなあかり」にして、葉っぱの部分は、ソフトドネガル というツイードヤーン のグリーン系をチョイス（現在は廃盤色です）。花の部分は、シェットランドという（英国羊毛100％）フェアアイルセーターなどを編む時に使う糸をチョイス。とにかく菜の花の連続模様を編み込んでいきました。試し編み（サンプル品）なので、裏地は、綿麻混のお手頃価格の布を選び、本体を編み上げて、あとはチクチク裏地を手縫いで縫ってファスナーをつけて、編み地本体とドッキング。いい感じです。「はなあかり」を40％offで購入したのと、シェットランドと、ソフトドネガル は、結構いいお値段の糸ですが、このポーチはサンプル品で、しかも冬しか使えないかなぁと思い、このお値段でのご提供です。大きめのポーチなので、ちょっとそこまでにも使えそう。
　菜の花の季節には、まだ早いけど、少し春を先取りするのにちょうどよいポーチです。持っていると心が豊かになります。お気に入りの作品に仕上がりました。

中にエアクッションを詰めて撮影しています。

《使用糸》 野呂英作　はなあかり　毛50％　絹25％　アルパカ25％
　　　　　シェットランド　英国羊毛100％
　　　　　ソフトドネガル（廃盤色）毛100％　イギリス製
《裏地》 　綿麻混　国産
《ファスナー》YKK 国産