詩集『Gecko舎』

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2016年９月30日発行
A5 判（148×210ミリ）
中綴じ
24ページ



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　ひんやりした泥の夢に包まれて、ゆりかもめはある朝まで身を潜めている。
　不安がそのまま羽の一枚に変わった、羊歯の重さを量るその朝まで。

　　――「遅い初夏」





ガラス水槽の眠るヒトデは、ちいさく透ける信号をぷつぷつ吐きだしている。薄荷いろの満月が近づく七月の地球。人より前にそこにあった音。
響きと波。

揺れていた世界のことを、わたしは思いだす。とてもやわらかで深く苦い、輝きに満ちていた闇のこと。

　　――「波紋」